こんにちは。幸せ志向セラピーの幸田いろはです。
今日は少し趣向を変えまして…
私が読んで印象に残ったマンガ、山岸涼子先生の自選作品集「月読」を紹介したいと思います。
山岸涼子先生のマンガはどの作品も心理描写が秀逸です!
なんだこれは!?と通念を覆されたり、心の暗闇を垣間見たりと、心に刺さるお話ばかりです。
月読 〜あらすじ〜
まず、お話のあらすじです。
お話の中心になるのは、日本の古代神イザナギから生まれた三人の神、天照大神(アマテラスオオミカミ)、月読命(ツクヨミノミコト)、素戔嗚尊(スサノオノミコト)です。
彼らは兄弟ですが、ツクヨミノミコトは姉であるアマテラスオオミカミを熱烈に慕い、彼女の関心をひくために姉の命令には忠実に従っていました。
一方で、弟のスサノオノミコトは自由奔放で荒々しく、勝手に振る舞うその様をツクヨミノミコトは毛嫌いしています。そんなスサノオノミコトのことを姉アマテラスオオミカミも口では咎めていたのですが…。
ある日、ツクヨミノミコトはアマテラスオオミカミの命で保食神(ウケモチノカミ)の様子を見にいきます。
そこで、いつものように接待を受けます。
しかし、そこで出された食事の準備の様子をみて、激しい嫌悪感と怒りに襲われたツクヨミノミコトは、なんと、ウケモチノカミを殺してしまうのです!
当然、姉からは激怒され「二度と会いたくない」と吐き捨てられます。
ショックを受けたツクヨミノミコトをさらに追い詰めたのは…。
姉アマテラスオオミカミと弟スサノオノミコトのあられもない姿!!
実はアマテラスオオミカミは荒々しくも、たくましくて雄々しいスサノオノミコトを好み、真面目で律儀なツクヨミノミコトを暗くて陰気臭い弟と忌み嫌っていたのです。
神であっても苦悩する
このお話を読んでの読後感が強烈でした。
最後、ツクヨミは、壮絶な絶望と苦痛、悲しみに包まれていました。
敬愛する姉が、嫌いな弟と愛しあっていたのですから、当然と言えば当然なのですが…
私は、ツクヨミはなんて損な役回りなんだろうと愕然とした思いに至りました。
ツクヨミノミコトはアマテラスオオミカミに気に入られるために、自分が嫌だと思う命にも背くことなく、尽くしていました。またその堅実さからウケモチノカミの行いを許せずに、殺めてしまったのですが…。彼の真面目で頑なな性格は、姉からは陰気で融通が効かないと捉えられて、気に入られることはありませんでした。
一方で、スサノオノミコトは自由気まま、奔放でやりたい放題、怒られても言い返してケロッとしています。人とぶつかり合う経験が多いので、結果、人との折衝のやり取りにも慣れており、実は頼りになる強さも持っているのです。何より、末の弟として甘え上手で愛嬌もあるので自然と愛されたのでしょう。
スサノオが愛されるべくして、愛されることに納得はできます。
ただ、ツクヨミのことを考えるとなんとも言えないやりきれない気分になるのです。
多分、中間子として生まれ、かつては「いい子」として生きていた私自身にも当てはめてしまって、より一層つらく感じたのかもしれません。
お話の中では主役であるツクヨミノミコトが奈落の底に突き落とされることによって、読み手にも衝撃が与えられ、心の葛藤をより深く考えさせられます。
ツクヨミの報われなさ、生き様が、親のために尽くして「いい子」でいたのに人生がうまくいかない、アダルトチルドレンのようだと感じたのは私だけでしょうか。
月読命の伝承
月読命とは本当はどんな神様なのかをお伝えしますね。
月読命(つくよみのみこと)は、日本神話における月の神で、天照大神(あまてらすおおみかみ)や須佐之男命(すさのおのみこと)とともに三貴子(さんきし)と呼ばれる重要な神の一柱です。
彼ら三貴子は、日本神話の創世の物語で、イザナギが黄泉の国(よみのくに)から戻り、禊(みそぎ)を行った際に生まれた神々です。
月読命は「夜」を司る神とされ、天照大神が昼を支配する一方で、月読命が夜を支配します。このように、昼と夜の調和を図るため、天照大神と対になる存在としても考えられています。
または夜を統べる神として崇められ、かつては、月の運行に基づく太陰暦を用いられたことから、月の暦を数える神と評されることも。さらに、月を「ツキ」といい、運を呼び込む神とも考えられています。
上記のことから月読命はとても重要な神様と思われるのですが、他の神々と比べて神話のエピソードが多く残っているわけではなく、謎の多い神様です。
「古事記」で月読命が登場するのは、誕生してすぐに夜を支配する神となることをイザナギに命じられる部分だけです。あとは、「日本書紀」の神話において「保食神(うけもちのかみ)」とのエピソードが記されているだけです。
【保食神(うけもちのかみ)との物語】
日本書紀によると、天照大神の命で月読命は食物の神である保食神のもとを訪れました。
保食神は月読命のために食事を準備しましたが、その方法は、なんと、自分の体の穴という穴から…全ての食材をだしていたのです!
「不浄だ」と感じた月読命は保食神を怒り、保食神の命を絶ってしまったと伝えられています。
この行為が原因で、天照大神は月読命と決別し、二度と会うことがなかったとされています。
このエピソードから、月読命は厳格な性格の持ち主とされる一方で、保食神を殺めた行為により、他の神々との関係性に微妙な距離が生まれたと考えられます。